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虎乃家光甲の在宅介護日誌

 ウォーキング、山登り、体に気を付けていた父が脳梗塞に倒れ、在宅介護が始まる。
 生活全般に介護が必要な父と、母、介護施設に勤める息子の日常、失敗、発見、笑い、疲れをつづります。

「介護は決してひとりで悩まないでください」

父の介護について

その日は突然やってきた。

 昔から多趣味な父で山登りは大好きでした。仕事を離れてからもよく身体を動かし、毎朝のウォーキング、秋には銀杏や干し柿を作ったり…。その後、中山寺奥の院参詣を毎日の日課にし、暑い日も寒い日も続けるストイックな父でした。

こんなに毎日を楽しくトレーニングしている父に、「これが介護予防となり、いつまでも元気でいてくれるだろう」と思っていました。しかし…状況は一変します。

 1000回を目標としていた奥の院参詣が700回を過ぎた頃、異変は起こりました。夕食を終えた後、急に右へ傾き始めたのです。手も上げることができません。病院へ受診すると脳梗塞の診断でした。幸い軽度で麻痺も残りませんでしたが、脳梗塞はその後も繰り返します。平成29年6月、4度目の脳梗塞は麻痺が残り長期入院となりました。

 

できれば在宅で…。

 私は父と母と3人暮らしです。

 退院の時期が迫り、医師からは施設の入所を勧められました。母と話し合い、悩んだ末、まずは自宅で介護しようと決めました。何もせず「そのまま入所」というのは、将来、父のことを思うと悔いが残ると考えたからです。

 医師、ケアマネジャーと相談し、できる限りデイサービスなどの介護保険サービスを、上限いっぱいまで使うことにしました。ここから私たちの「介護の戦い」が始まったのです。

 

介護は戦い。失敗の連続。

 デイサービスを週に5回利用しています。訪問介護を週3回。そして訪問リハビリ、訪問看護、訪問診療。それ以外に食事介助や着脱、吸引…。一日は早いです。

 元気だった父は今はこちらの問いかけにも反応しません。父は楽しいのか?これでいいのか?毎日は過ぎていきます。心が折れそうになります。

特にしんどいのは排泄の介助です。着脱・おむつ交換と時間が掛かり、母との喧嘩もたびたびありました。
 ストレスの連続です。

 ある日、いつものように母と口論になりました。もうだめかなと思った時、表情の消えていた父が笑ったのです。一瞬にして悲しい涙から嬉し涙に変わった瞬間でした。父の笑顔が空気を変え、2人で言いました。「もう少し頑張ろうね」。

介護は失敗の連続です。でもそれが私たちのかけがえのない経験となり、勉強になりました。

 

介護は楽しくありたい。父への恩返し。

 それ以来、‘少しは楽しく考えよう’と思うようになりました。

 家庭用プロジェクターと自動巻き上げスクリーンを購入。週末にはそのスクリーンに、父の好きだった北アルプスの名峰を映したり、3人で映画「男はつらいよ」シリーズ。母も楽しそう。何かほのぼのとする束の間のひと時…。楽しむことによって声も弾む。介護は楽しいことを考えることも大切だと思います。

 私は一番ストレスがかかる排泄介助にこだわりました。自分がストレスを感じるということは、本人が一番つらいのだろうと。誰もおむつで排泄などしたくはないと思うんです。いやだろうなぁと。気持ち悪いだろうなぁと。

 普通に思うことを普通に実践しようと思い、おむつ交換の母の負担と父のことを考え、毎日寝る前にトイレの便座に座らせて介助をしています。

 

食べることについて。

 今の状態になって、食べることも難しくなってきます。飲み込む力・筋力が弱まり、むせるようになったのです。気をつけないといけないのは誤嚥性肺炎。とろみをつけ、食形態も変えていきました。それでもだんだん飲み込みが難しくなっていき、食べるのに時間がかかります。「胃瘻」も考えていかないといけない。そうなってきます。
 ある日、天気が良かったので散歩に出て、1日の活性化を図りました。するとその日の夕食、
いつもは一時間以上かかっていたのが、30分で終わったのです。父にとっては毎日が何もなく過ぎていく。普段私たちと同じように外へ出る、陽に当たることがいかに大事であるか、改めて感じた瞬間でした。意思疎通はできないので、辛い毎日だと思います。

楽しいことを少しでも考えていきたい。

在宅介護、まだまだできることがいっぱいある。そう感じました。

 まだまだ頑張れる。父のために。

 

グリーンアルス伊丹のショートステイ

 そういう思考になれたのは、今勤めているグリーンアルス伊丹の仲間たちの理解と、在宅介護を支えてくれているケアマネジャーはじめ、医師、歯科衛生士、デイサービス、訪問看護、訪問介護、リハビリの皆さんのおかげです。

 そして、今現在、父は、私が勤めている「介護老人保健施設グリーンアルス伊丹」のショートステイを月に2〜3回利用しています。ショートステイとは、短期間だけ施設に入所して食事や入浴などの介護を受けることができるサービスのことです。利用することで休息ができ、母の負担軽減になります。仲間であるスタッフのみんなが、温かく見守ってくれて、とても助かり、心から感謝しています。とても安心です。

「これからも頑張ろう」という気持ちになるんです。

 

在宅介護の重要性、その先へ。

 在宅介護はしんどいです。イライラすることも多い。でも、できる限り納得がいくまで住みなれた家で介護を続けたいと思います。

「家族の絆」。コロナの影響でいろいろなことが変わってきました。だからこそ、家族の絆を大事にする在宅介護が重要になってくると私は思います。

 環境によって介護は違ってきますが、同じように在宅介護を続けておられる方、これからサービスを受けようとされる方、介護に困っておられる方に私は、この経験と気持ちを伝えたいと思います。

 

私は「父からたくさんの愛情を受けた分、恩返しの時だ」そう思っています。そんな介護でありたい。


グリーンアルス伊丹   島崎 充功

 


医療法人社団緑心会
介護老人保健施設
グリーンアルス伊丹

兵庫県伊丹市西野3丁目240番地
TEL.072-779-6600
FAX.072-784-4822

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